(令和6年12月2日 日司連常発第135号)
令和6年12月1日より、公証役場での「株式会社の定款認証」の手数料が下記のように変更された、とのこと。
資本金の額が
・300万円以上 →手数料5万円
・100万円以上300万円未満 →手数料4万円
・100万円未満 →手数料3万円
・100万円未満で、発起人全員が自然人で、発起人が3人以下で、
発起設立(設立時発行株式の全てを発起人が引き受ける)であることが定款に記載
され、取締役会を設置する記載が定款に無い
→手数料1万5000円
法人設立についてのハードルを下げる、という趣旨でしょうか?
このほか既に施行されている、定款認証までの期間短縮、設立登記の法務局での事務処理期間短縮などありましたね。
その一方で犯罪による収益移転防止法に基づいて、司法書士による本人確認が厳格化されましたが、法人を利用した犯罪というのも世の中には存在し、法人を設立し易くすることは法人利用犯罪の助長と取られかねないと思ってしまう私は思慮が足りないのでしょうか。どうも国の制度に齟齬が生じているように思えて仕方ありません。
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商業登記規則等改正(令和4年9月1日施行)
株式会社の代表取締役等の住所非表示措置が始まり、類似する制度があったことを思い出したので、比較および備忘録として。
(令和4年8月3日法務省民商第378号通達)
(令和4年8月25日法務省民商第411号通達)
●令和4年9月1日施行
●内容
①支店、従たる事務所の所在地における登記を廃止。
②電子提供措置をとる旨の定款の定めが登記事項となる。
・株式会社(特例有限会社を含む。)だけ。
・振替株式発行会社では利用が義務付けられる。
・株主総会資料を掲載したウェブサイトのURLを招集通知に記載して行う。
・特別決議で定款に定める事ができる。
・登録免許税は「ツ」で3万円。
③会社登記簿の自然人の住所の非表示の申出制度。
DV被害者など。
④併記可能な旧氏を拡大。
株式会社の代表取締役等の住所非表示措置
(令和6年7月26日法務省民商第116号通達)
●令和6年10月1日施行。
●登記事項証明書又は登記事項要約書に記載されている、株式会社の代表取締役、
代表執行役、代表清算人の住所の表示が、登記の申請と併せた申出をすることで、
市区町村(政令指定都市は行政区)までの表示になる。
●株式会社だけ。特例有限会社は含まない。(116号通達2頁目)
●要件
①代取等の住所が記録される登記申請と、同時に、申出をする場合に限る。
オンラインでもOK。
例)設立、就任、重任、住所変更、他管轄への本店移転。
②必要な添付書面がある。
パターンA
(非上場株式会社で、代取等住所非表示措置(本措置)が講じられていない。)
・株式会社の本店所在場所における実在性を証する書面
例)登記申請を受任した資格者代理人が実在を確認した書面。
株式会社の本店所在場所宛の配達証明書+郵便物受領証。
(郵便を受け付けてもらった際に窓口で貰える控え)
・非表示措置をしたい代表取締役等の住所証明書
例)住民票、戸籍の附票、
運転免許証や個人番号カードのコピーに本人が原本証明したもの。
・株式会社の実質的支配者の本人特定事項証明書
例)登記申請を受任した資格者代理人が犯収法に基づいて作成した確認記録の
コピー。
登記申請日の属する年度、又は前年度に、法務局に実質的支配者リストの
申出をしていれば、その旨記載すればOK。
パターンB
(非上場株式会社で、本措置が講じられている。)
・非表示措置をしたい代表取締役等の住所証明書。
パターンC
(上場株式会社で、本措置が講じられていない。)
・金融商品取引所のウェブサイトの、当該会社の情報が掲載されているページを
プリントしたもの。
●代取等が退任、登記記録が閉鎖されても、非表示措置は終了しない。
●非表示措置がされている住所と同一のものを登記する際には、登記官は、引き続き
非表示措置を講ずる。
同一のものを登記 = 他管轄への本店移転、重任、再任の登記。
いずれも住所に変更がないこと!
改めて申出をする必要なし!
●非表示措置がとられている代取等について住所変更登記をする際、変更後の住所も
非表示にしたい場合には、改めて申出が必要となる。
●非表示措置が終了されてしまう場合
・非表示措置を希望しない旨の申出があった場合。
・株式会社の本店所在場所における実在性が認められない場合。
・上場会社でなくなった場合。
・閉鎖登記を復活すべき事由があると認められる場合。
司法書士が相続登記の申請を受任する際、本人確認及び意思確認をする対象は誰か?
●『特段の事情がある場合を除き、職責として行うべき本人確認及び意思確認の対象者は
依頼者(申請人となる者)であると考えます。』
(令和5年9月28日 日司連常発第105号)
司法書士による本人確認作業。
時間をかけて行うものですから、周りの方々からは鬱陶しがられてしまうこともあるかとは存じますが、我々も法令および司法書士会則に則ってお仕事で行っておりますので、どうかご理解とご協力をお願い致します。
外国人である所有権登記名義人の氏名へのローマ字氏名併記
(令和6年3月22日法務省民二第552号通達)
●令和6年4月1日施行
●ローマ字氏名の併記がされる場合
①外国人が、新たに所有権登記名義人となる登記などの申請に伴い、ローマ字氏名の
併記申出をした場合。
②外国人の所有権登記名義人が併記申出のみをした場合。
●通達には、
新たに所有権登記名義人となるような登記では「申出をすべき」となっており、
既に所有権登記名義人となっている場合には「申出ができる」と記載されている。
●外国人(日本国籍を有しない自然人)である所有権登記名義人の氏名だけに併記される。
法人には併記できない。
氏名の表音をローマ字で表示したもの。
氏名が漢字表記の外国人(支那人など)であってもローマ字氏名を併記する。
●ローマ字はすべて大文字で表記する。
●氏と名の間は「スペース」で区切り、中点は使用できない。
●記録例
所有者 東京都●●
ジョン・スミス(JOHN SMITH)
洪吉童(HONG KILDONG)
相続を原因とする所有権移転登記の登録免許税の免税
今さらですが。
現状不景気にもかかわらず、費用のかかる相続登記を義務化したのですから、もっと減税幅を拡大して頂きたいものですね。
●令和7年3月31日まで。
●2パターンある。
①「死者名義」での「土地」の相続登記
根拠条文 →「租税特別措置法第84条の2の3第1項により非課税」
②不動産評価額(持分であるときは持分評価額)が「100万円以下」の「土地」
の相続登記
根拠条文 →「租税特別措置法第84条の2の3第2項により非課税」
●(令和6年3月19日法務省民二事務連絡)
Xが死亡、相続人はAとB、その後Aが死亡。
X名義の不動産を、法定相続分でAとB名義に所有権移転登記をする場合、
Aについては上記パターン①に該当するので非課税、
BについてはAが取得する持分に課税されるはずだった登録免許税を全体から控除した
残額が登録免許税となる。Bについて上記パターン②には該当しない。
不動産登記の旧氏併記(不動産登記規則一部改正)
(令和6年3月27日法務省民二第553号)
●令和6年4月1日施行。
●所有権の登記名義人に限る。
●日本国籍を有する者に限る。
●氏に変更があった者が過去に称していた氏で、戸籍に記録されている氏。
●所有権に関する登記を申請する際に併せて旧氏併記の申出を行う、又は、旧氏併記の申出
のみを行う方法による。
●記録例
所有者 東京都●●
法務花子(登記花子)
法定相続情報番号を提供する事で、相続があった事を証する情報の提供に代えることができる。
(令和6年3月21日法務省民二第569号通達)
●令和6年4月1日施行。
●住所証明情報に代えることもできる。
●提供例:
添付情報
登記原因証明情報(法定相続情報番号(1234-56-78901))
住所証明情報(法定相続情報番号(1234-56-78901))
担保権抹消の登記委任状への押印が印刷になる
(令和6年1月24日法務省民二第57号通知)
(令和6年1月24日法務省民二第58号回答)
●三菱UFJローンビジネス株式会社、ダイヤモンド信用保証株式会社が振り出す
抹消登記委任状の押印は印刷されたものになる。
●登記原因証明情報への押印は、今まで通り。
所有権登記の登録免許税を軽減するための書類
(令和6年4月1日国住経法第51号)
●令和6年7月1日から適用される。
●所有権登記の登録免許税軽減証明書である住宅用家屋証明書に代えて、
宅地建物取引業者が発行する確認書(入居見込み確認書)でも足りることとする。
●買主が旧住所のまま登記を受ける場面で出てくる書類、という事かな?
所有権登記の登記事項追加
(令和6年3月22日法務省民二第551号通達)
●令和6年4月1日施行
●追加事項
①所有権登記名義人が、法人である場合
・会社法人等番号を有する法人 → 会社法人等番号
・会社法人等番号を持たない法人で外国法令に準拠して設立された法人
→ 当該外国の名称
・上記のいずれでもない法人 → 設立根拠法の名称
②所有権登記名義人が、国内に住所を有しない場合
・国内連絡先となる者の、氏名名称、住所、会社法人等番号。
・国内連絡先となる者がいないときは、その旨。
●添付書面も増える。
不動産登記簿謄本に記載すべき住所に代えて、公示用住所を記載する代替措置
(令和6年4月1日法務省民二第555号通達)
●令和6年4月1日施行。
●登記に記録されている者の住所に代えて、
公示用住所提供者(登記に記録されているものと連絡をとることができる者)の住所、
事業所、事務所などを登記記録に記載する措置。
●登記に記録されている者(自然人に限定)からの、申出による。
申出にかかる不動産の管轄法務局でも、それ以外のどこの法務局に申出をしてもOK。
●対象 → 登記に記録されている自然人。
登記名義人であった者、信託目録に記載されている者、閉鎖登記簿に記録
されている者、等も該当する。
●要件 → 生命身体に危害が及ぶ虞がある。
ストーカー被害を受けた者で更に反復して被害に遭う虞がある。
児童虐待を受けた者で更に被害に遭う虞がある。
配偶者暴力の被害者で更に被害に遭う虞がある。
その他、心身に有害な影響を及ぼす行為を受ける虞がある場合。
登記に記録されている自然人の住所が明らかになる事で、第三者(同居人など)
が上記の被害に遭う虞がある場合も要件に合致する。
●必要書面 → 申出書
印鑑証明書(作成期限なし!)
住所変遷証明書(不一致の場合)
申出についての委任状(代理申出の場合)
要件該当証明書(陳述書+過去被害事実の裏付書類 通達18頁目)
公示用住所、公示用住所提供者の氏名名称を証する書面
公示用住所提供者の承諾書
●申出人又はその相続人は、代替措置が講じられていない登記事項証明書の交付を請求でき
る。
相続登記義務化の制度、始まる
令和6年4月1日より、不動産の所有権登記名義人に相続が発生した場合、自己に相続が開始し且つ不動産所有権を取得したことを知った日から3年以内に、所有権移転登記を申請する義務が相続人に課される制度が始まった。
免税措置として、
・死者名義での土地の相続登記(租税特別措置法第84条の2の3第1項)
・評価額(または持分価額)100万円以下の土地の相続登記(同第2項)
については登録免許税が非課税となるが、この免税措置は令和7年3月31日までの期間限定なので、本免税措置を適用できる場合にはこの期間中に相続登記を終えておきたい。
法定相続情報証明の申出書に添付する「申出人の氏名住所の証明書」について
(令和6年3月21日付法務省民二第569号)
法定相続情報証明の申出書に添付する「申出人の氏名住所の証明書」として運転免許証のコピー等を提出する場合、そのコピーには申出人本人が「原本と相違ない。」と記載するか、代理人が「原本と相違ない。」旨記載するには登記申請と同時にする必要があったが、本改正により、代理人が原本と相違がない旨記載しても差し支えないこととなった。
この場合、代理人の記名を要する。
本改正は、令和6年4月1日から施行する。
「法定相続情報番号」の提供による「相続があった事を称する情報」の添付省略
(令和6年3月21日付法務省民二第569号)
不動産登記規則の一部改正により、法定相続情報番号(11桁の、法定相続情報証明書の右上に記載された番号)を提供することで、相続があった事を証する情報(主に戸籍の証明書)の提供に代えることができるようになる。
ただし、飽くまで「相続があった事を証する情報」に代替するだけで、遺産分割協議書や相続放棄があった事を証する書面までをも代替するものではない。
また、相続人の住所が記載されている法定相続情報番号の提供により、相続人の住所証明情報の提供に代えることもできる。
登記申請書への記載例:
添付情報欄
登記原因証明情報(法定相続情報番号(1234-12-12345))
住所証明情報(法定相続情報番号(1234-12-12345))
(法定相続情報証明制度に関する質疑応答事項集)
問103
オンライン申請において、法定相続情報番号の提供により、登記原因証明情報の全部また
は一部として申請時に添付する一覧図のPDFについても省略できると考えるがどうか?
答
御理解のとおり。
本改正は、令和6年4月1日から施行する。